クリスマスの焼き菓子「シュトーレン(シュトレン)」って、クリスマスケーキに比べて地味なのに、結構値段が高いと思いませんか。
シュトーレンにつきものの「マジパン」も、なぜ入っているのか不思議という声も。シュトーレンの不思議を調べました。
シュトーレンの値段が高い理由
クリスマスケーキよりも高い
シュトーレンは発酵させて作るので、ケーキ屋さんというよりパン屋さんで売られているのをよく見かけます。
日常的なパンの中に並べられたシュトーレンですが、季節ものとはいえ、その価格に驚いたことがある人も多いのではないでしょうか。
かなり小さなサイズでも1000円以上、大きなものでは7000円というものも。
クリスマスケーキなどが数千円であることを考えると、シュトレンは少し高い気もします。
なぜシュトーレンの価格はこれほど高いのでしょうか。
本場ドイツではシュトーレンには厳格な資格と法律がある
シュトーレンの本場ドイツにはさまざまなシュトーレンがあります。そして、州によっては、作り方が法律で定められており、審査に通らないとシュトーレンとして認められないところもあります。
例えばシュトーレン発祥の地といわれれるのがドイツ南部のドレスデンです。
ここでは、伝統的な「Dresdner Christstollen(ドレスデンのシュトーレン)」と認められるものには、
小麦粉1kgにつき
- バター500g
- 干しぶどう650g
- レモンピールとオレンジピール200g
- アーモンド150g
使用できると定められています。
これらは戦後、ドイツ民主主義共和国(東ドイツ)の時代に品不足が起こり、本来のシュトーレンに使う材料が入手できなくなったことが背景にあります。由緒正しいシュトーレンを作るため、正しい材料やレシピが法律で保護されているのです。
日持ちする
ヨーロッパではクリスマス前のアドヴェント(待降節)と呼ばれる期間からクリスマスのイベントが始まります。
そんな時期のドイツでは、シュトーレンを毎日少しずつスライスして食べています。そのため、一ヶ月ほどの期間に美味しく品質が悪くならないようにシュトーレンの材料やレシピには色々な工夫がされています。
シュトーレンの日持ちは常温で6ヶ月といわれるものもあり、長期保存でき、シュトーレン通の人なら春先まで味の熟成を楽しむこともできてしまうのです。
さまざまな材料を使う
シュトレンは粉やバターといったお馴染みの材料を使う一般的な焼き菓子と違って、ドライフルーツ、スパイスなどが必要です。
例えば、シュトーレンは表面に白い粉砂糖をたっぷりとまとっています。この砂糖の層のおかげで、パン生地本体に含まれる水分が少なくてすみ、カビの発生を防ぐことになります。
生地に使われるバターも通常の焼き菓子より多めです。さらにパンの表面に溶かしバターを何度も塗ることでコーティング隣、酸化防止の効果もあります。
生地に入っているドライフルーツは長い時間洋酒に漬け込まれ、アルコールを含んで水分が少なくなって、品質保持を可能にしています。このように、ただのパンというには、あまりにも多くの工夫が凝らされた食材が使われているのです。
手間をかける
シュトーレンは材料が多岐にわたるだけでなく、それぞれにたくさんの手順があります。風味だけでなく、日持ちさせるために時間をたっぷりかけた贅沢なお菓子なので値段が高いのです。
まず生地は前日から低温発酵をすることで、味を熟成させ、しっとりとした食感になります。
ふつうのイーストを使ったパン作りなら発酵時間は数時間程度であることを考えると、かなり時間をかけることになります。
シュトーレンの中に含まれているドライフルーツも、ただ刻んであるだけではありません。
ドライフルーツはラム酒やブランデーなどの洋酒に漬け込みます。漬け込みの時間は長ければ長いほど美味しくなり、最低でも10日ほど、長ければ1年前から漬けている人もいます。
さらに、生地の焼き上がりには表面に溶かしバターを塗り、その上から砂糖をまぶし、完全に冷めるのを待ちます。
こうした時間と手間が必要なシュトーレンはたくさん作って安く売るということができません。一つ一つに材料と手間をかけて食べる、クリスマスの時間を豊かにする存在なのです。
マジパンの入ったシュトーレンは値段も高くなる
マジパンの材料はアーモンドと砂糖です。
近年の健康ブームと相まって、アーモンドは健康によく人気の食品となりました。それならとミックスナッツやアーモンドを購入しようとすると、意外と高価で、思ったほどたくさんは買えない経験をしたことはありませんか。
アーモンドは生産量の8割以上がアメリカで生産されています。しかし、世界的な異常気象の影響で生産量が落ちたところに、世界中で需要が増えているため、アーモンドの価格は高騰し続けています。
そんなアーモンドを材料にしているため、マジパンをたっぷり使ったシュトーレンは風味や食感の美味しさとともに、値段もしっかりと高くなってしまいます。
シュトーレンにマジパンはなぜ入っている?
シュトーレンをスライスしたとき、断面には、ナッツやフルーツなどに混じって真ん中あたりに白っぽく丸いものが見えることがあります。食べると甘く、少ししっとりしているこの食品は、マジパン(マルチパン)と言います。
日本ではそれほど食べる機会がないマジパンですが、多くのシュトーレンに入っています。本場ドイツではシュトーレンにはマジパンが必須というところも。このマジパンが入っているのは何故なのでしょうか。
マジパンが味の深みを出す
マジパンの原料となっているアーモンドの風味が生地に移り、風味豊かで味わい深いシュトーレンになります。またマジパンの含んでいる砂糖が甘みをプラスします。
マジパンの水分がしっとりとした食感を生み出す
シュトーレンを作るとき、細長い円筒状にしたマジパンを生地に包み込みます。こうすることでマジパンの含む水分が少しずつ生地になじみ、しっとりとした食感が出来上がります。
シュトーレンの値段を比較
シュトーレンは10センチ〜20センチくらいで、数千円が相場と言えそうです。大きさの割に高く感じるかもしれませんが、材料やレシピへのこだわりは格別です。
ドレスドナークリスマスシュトーレン
- 520g
- 長さ18.5cm
シュトーレン発祥の地ドレスデンの厳しい基準をクリアした「ドレスドナークリスマスシュトーレン」。このシュトーレンはドレスデンの名店「ベッカライ・クラウゼ」が作ったものですが、毎年行われるドレスドナー保護連盟による品評会で何年も高得点をえて、世界一のシュトーレンと呼ばれています。
ドレスデンの審査基準をクリアし、高評価された本物の味を日本で味わえるなら高くはない?
「クリオロ」のシュトーレン
- 430g
- 長さ約20cm
洋菓子の「クリオロ」が期間限定で発売しているシュトーレンです。甘さひかえめで、マジパン入りのしっとりとした食感が味わえます。
世界的パティシエであり、ショコラティエでもあるサントス・アントワーヌのパティスリーであるクリオロ。上質でありながら、気取らないお菓子が人気です。
シュトーレン ショコラーデ
京都・亀岡の天然酵母パン屋さん「グリム」のシュトーレンです。国産小麦、天然酵母を使ったシュトーレンで、中のフルーツは丹波ワインに漬け込まれたこだわりの一品です。
さらに高級チョコレートを使用しているため、芳醇なチョコレートの薫る生地にも注目です。賞味期限が3ヶ月あるので、クリスマスだけでなくバレンタインにも。
「ロブション」の和三盆シュトーレン小サイズ
美味しくオーセンティックなパンで人気の「ジョエル・ロブション」。このお店のシュトーレンは表面の砂糖に和三盆を使い、甘いのにさっぱりとした味わいと、食べた時の口溶けが格別です。
小サイズは13センチほどのサイズで、他にも大サイズがあります。
値段と材料で好みのシュトーレンを選ぼう
クリスマスが近づくと日本でも色々なお店からシュトーレンが売り出されます。本場ドイツの味から日本人が食べやすいようにアレンジされたものまであります。
値段が高いシュトーレンも、サイズを小さいものにすれば買いやすい値段に。小さめサイズがないか確認してみましょう。日本人好みにアレンジされたシュトーレンは賞味期限が短めのものが多いですが、それでも2週間程度は日持ちします。日本の食材を使って食べやすく美味しいものもあり、洋酒やスパイスが苦手な人にもおすすめできます。
少しくらい予算オーバーでも本物のシュトーレンを味わってみたい、ドイツ人のようにアドヴェントに少しずつ食べたいという方は、マジパン入りのシュトーレンがおすすめです。
シュトーレンは聖なるクリスマスの夜の静かな時間にぴったりの特別なお菓子。じっくりと手間をかけて、ドイツの歴史や知恵の込められたシュトーレンを、風味や値段を吟味しながら、今年のクリスマスにご自宅で味わってみてはいかがでしょうか。
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