ローストビーフは食中毒にならないの?
食卓の中心に並ぶと、一瞬で華やかさをプラスしてくれる「ローストビーフ」
その鮮やかなピンク色が、むしろ食欲をそそります。
しかし、生の肉だとしたら食中毒の危険もありますが、なぜ、あんなにきれいなピンク色をしているのでしょうか。
それには、牛肉を焼く際の中心温度が関係しています。
今回は、そんな「ローストビーフ」の秘密を紐解いていきます。
ローストビーフの中が赤くても食中毒にならない理由
牛肉の内部が無菌状態だから
鶏肉や豚肉は牛肉と異なり、生肉の塊は内部に菌が存在します。
しかし、牛肉は無菌状態となるため、中が赤いとしても食中毒にはなりません。
牛肉の内部はなぜ無菌状態になるのか
牛肉の内部が無菌状態になるのは、主に2つの理由があるとされています。
詳細は分かりにくく、どの資料にもはっきりとは記載がありません。
そこで、主に体質に関して、鶏や豚と異なる牛ならではのポイントをご紹介します。
胃は大きく4つに分かれており、そのうち食物が真っ先に入る第一胃が胃全体の70%を占めています。
ここでは、主に炭水化物・セルロースを他の有機酸に分解するとともに、タンパク質を分解するという役割を担っています。
牛の第一胃は、特異的な物であり、第一胃と第二胃で消化が繰り返されます。
反芻とは、一度食べたものを吐き出して、また再咀嚼するということです。
4つもある胃の内、第一胃を過ぎた食物が、第二胃に到達した時点で、反芻が起こります。
反芻により、食べたものはより小さく、そしてより消化されて身体に吸収されていきます。
直接の因果関係があるかは証明が難しいのですが、何度も消化が繰り返されることに加え、牛特有の胃内に潜む多くの微生物によって、体内から菌が大幅に減っていくのではないかと考えられます。
表面に付着した菌は加熱されるから
牛肉の内部は無菌状態だとしても、私たちの周りには多くの菌が潜んでいます。
もちろん、それらの菌が肉の表面に付着することがあります。
しかし、調理の過程で表面の菌は加熱されるため、食中毒の危険が無くなっていきます。
赤い汁は血液ではなく肉汁だから
ローストビーフから、赤い汁が漏れ出すことがあります。
これは、生焼けだからではなくローストビーフの肉汁が溢れているのです。
なぜローストビーフの肉汁は赤いのか?
食肉には、ミオグロビンと呼ばれる色素のタンパク質が多く含まれています。
この、ミオグロビンは新鮮な食肉の場合、暗赤色をしています。
加熱をすることで、タンパク質が変性し、ハンバーグのような灰褐色へと変化します。
ローストビーフは、下味をつける段階で塩漬することが多いのですが、塩漬けした食肉の場合、ミオグロビンは加熱し続けると鮮やかな桃赤色へと変化します。
これが、ローストビーフから出る肉汁の正体です。
血液がそのまま流れ出ているように見えますが、そんなことはありません。
おいしさがたっぷり詰まってますので、ぜひ味わってください。
ローストビーフは国が定める規格基準が厳しい?!
市販のローストビーフも、もちろん食中毒にならないよう、しっかりと国が基準を定めているのをご存知でしょうか。
以下は、厚生労働省ホームページよりローストビーフが該当する「特定加熱食肉製品」の規格基準です。
特定加熱食肉製品は、次の基準に適合する方法で製造しなければならない。
a 製造に使用する原料食肉は、と殺後 24 時間以内に4℃以下に冷却し、かつ、冷却後4℃以下で保存した肉塊で pH が 6.0 以下でなければならない。
食肉製品
b 製造に使用する冷凍原料食肉の解凍は、食肉の温度が 10℃を超えることのないようにして行わなければならない。
c 製造に使用する原料食肉の整形は、食肉の温度が 10℃を超えることのないようにして行わなければならない。
d 食肉の塩漬けを行う場合には、肉塊のままで、乾塩法又は塩水法により行わなければならない。
e 塩漬けした食肉の塩抜きを行う場合には、5℃以下の飲用適の水を用いて、換水しながら行わなければならない。
f 製造に調味料等を使用する場合には、食肉の表面にのみ塗布しなければならない。
g 製品は、肉塊のままで、その中心部を次の表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならない。この場合において、製品の中心部の温度が 35℃以上52℃未満の状態の時間を 170 分以内としなければならない。(表 省略)
(以上厚生労働省ホームページより抜粋)
全て読むのは、一苦労かと思いますが、要するにお伝えしたいことは1点です。
市場に出回るローストビーフは、安全かつ美味しいものです。
日本の定める食品ルールは、他国に比べても非常に厳しいものです。
したがって、市販のローストビーフを召し上がっても食中毒になることはありません。
ローストビーフで食中毒になる原因
なんか楓既が飯テロしてる
— 風汰 (@fuuta_pingpong) February 27, 2016
美味そうだけど今日の夕飯のローストビーフにあたって腹痛なったから複雑wwww
ローストビーフに当たってしまったという方のツイートです。
腹痛で収まらず、症状が悪化するケースも少なくないでしょう。
妊娠すると
— 母りすさん🍓🐿 (@pieandc5) September 14, 2020
酒タバコ❓当然禁止‼️
コーヒー紅茶❓それデカフェ❓控えてね❓
寿司も刺身もローストビーフも食中毒の危険性あるから妊娠中ぐらい我慢我慢‼️チーズも危ないやつあるよ⁉️
初期は鰻も要注意な‼️
赤ちゃんの為バランスのよい食事をとれ‼️あまり太るな、でも痩せすぎも駄目‼️
と言われ pic.twitter.com/ML1aSQSD9J
妊娠中の方や、お子様、ご年配の方など、免疫力が低下している方には特に注意が必要です。
先ほどお話しした通り、ローストビーフも、しっかりと調理、保存されていれば食中毒にはならないでしょう。
ではなぜ、実際に食中毒が起こってしまったのでしょうか。
中心部が加熱されていなかった
たとえ牛肉の内部が無菌状態だとしても、時間が経てば食中毒の原因となる菌は繁殖してしまいます。
さらに生焼けの場合、牛の筋肉に寄生したサルコシスティスをはじめとする寄生虫により、食中毒を引き起こす可能性もあります。
そのため、内部まで、しっかりと加熱して、殺菌する必要があるのです。
菌が繁殖してしまった
食中毒の原因となる「大腸菌」や「カンピロバクター」は、高温多湿を好みます。
たとえば、特に夏場、買ってきたお肉を冷蔵庫に入れずに放置してしまったり、冷蔵庫に食品を詰めすぎて温度が上がってしまったり。
はたまた、パーティーなどで長い時間放置された生焼けのローストビーフがあったとしましょう。
これらは、間違えなく菌が繁殖します。
いずれにせよ、保存する際には冷蔵庫で10℃以下、冷凍庫で-15℃以下にしておくことを心掛けましょう。
さらには、他の食肉から繁殖することも考えられるので、冷蔵庫へ入れる際は、汁が漏れないようにラップがしっかりとくるまれているか確認しておきましょう。
ローストビーフの中心温度
さて、食中毒が起こる原因菌はどのくらいの温度で死滅するのでしょうか。
表面の温度ではなく、ここはあくまで「中心温度」というのがキーになります。
とはいえ、ここまで芯の温度を高温にしてしまっては、ローストビーフ特有の色鮮やかな断面にはならず、茶色に近い焼き色が出来上がることでしょう。
あの色鮮やかな色は、「ロゼ」と呼ばれる状態です。
ステーキを焼くと、焼き加減を「ミディアム」や「レア」と表現されることがありますが、ローストビーフの場合は、「ロゼ」に仕上げることが良いとされています。
ではその、「ロゼ」にするためには中心温度を何度にして、どのくらいの時間焼くことが良いのでしょうか。
「ロゼ」は血液が固まらず、タンパク質のみが固まった状態です。
この状態にするには中心温度を54~57℃にする必要があります。
また、温度が下がることで、食中毒の原因菌は生存しやすくなります。
そこで、低温調理をする際は、温度管理をしながら、長時間じっくりと加熱しなければいけません。
54~57℃の加熱であれば、約1時間程度は殺菌の為に加熱する必要があるでしょう。
ローストビーフの中心温度の測り方
竹串を使う
私がローストビーフ肉を買う肉屋の店主のアドバイス、肉に竹串を刺し唇にあてて冷たくなければ火を止めホイルに包んで余熱に任せる。このやり方も外れなしです。
— さっちゃん (@runrun_sachiko) June 28, 2016
方法は、至ってシンプルです。
焼いた後の肉の中心に竹串か、金串を刺し、下唇に当てましょう。
熱ければ「焼きすぎ」、温かければ「ロゼ」、冷たければ「生焼け」と判断してください。
コストがかからないため、非常に簡単な方法です。
触ってみる
ローストビーフ(*´ω`*)
— チコリィィ (@craft_Chicory) October 2, 2014
写真だと結構赤く見えるけど、
真ん中切って中心を指で触ると、
ちょっと熱いくらいの温度だったので、火の通った生です(*´ω`*)
タレはニンニクの効いた、
玉ねぎベースのタレです(*´ω`*) pic.twitter.com/yi0ZYy5svJ
焼いた後の肉を指で触ってみて下さい。
焼けていれば、ほんのり温かく、かつ締まりが出てきます。
しかし、生焼けの場合は冷たく、生肉同様の柔らかさが感じられるはずです。
肌に直接触れるため、火傷には十分注意していただくと共に、食中毒の原因となる菌が付着する可能性があるため、きちんと手を洗いましょう。
断面を見る
今日の晩ごはん
— ブレゲ (@Breguet_san) April 17, 2021
ローストビーフ🥩🍴
断面は綺麗なロゼカラーです🎵
美味しく頂きました😋#ローストビーフ#簡単料理#おうちごはん#ストウブ pic.twitter.com/n2PMpjlFIe
断面には生肉と異なり、繊維状の筋が入ります。
これは、牛肉のタンパク質が変性されたためです。
きちんと焼けているのか、確認のために断面に現れる繊維状の筋を確認してみましょう。
ローストビーフの焼き加減を温度計で詳しく測る方法
レシピサイトを参考に、温度計を使ったローストビーフの調理法について、ご紹介していきます。
オーブンを使った調理法
シンプルなイブのごはん。140度のオーブンで1時間弱焼いたあとに炬燵で余熱を加えたうちもものローストビーフと、グリュイエールチーズを散らして焼いたオニオングラタンスープ。芽キャベツはソテーし、人参はバターでグラッセに。タルトはいつもの。
— 三浦瑠麗 Lully MIURA (@lullymiura) December 24, 2019
もうすぐサンタが来そう。早く寝なきゃ。 pic.twitter.com/W4kkGAdYoE
- 材料(2~3人分)
-
牛塊肉・・・1000g
塩・・・小さじ1.5
ブラックペッパー・・・小さじ1
タイム・・・2~3枝
ローズマリー・・・1枝
ガーリックパウダー・・・小さじ1~1.5
サラダ油・・・小さじ1
料理用温度計
アルミホイル
ラップ
タオル - 作り方
-
1. タイム、ローズマリーを枝から外して、粗くみじん切りにする
2. 1に塩、ブラックペッパー、ガーリックパウダーを混ぜる
3. 2を牛肉によくすりこむ
4. ラップで包んで、冷蔵庫に3時間以上寝かせる
5. 調理を始める1時間前に、冷蔵庫から4の肉を取り出し、常温に戻す
6. フライパンにサラダ油を小さじ1しき、強火で肉の全面を焼く
7. 天板にクッキングシートを敷いて、6の肉を置き、100~140℃に予熱したオーブンで45分ロースト(料理温度計で中心部が50~52℃になるまでローストする)
8. ローストが終わり次第、オーブンからローストビーフを出す
9. その後、アルミホイルで包む。そしてそれをラップで包んで、タオルで包んで30分以上保温
本格的に調理したい方には、おすすめのレシピです。
オーブンで加熱する際は、温度計でしっかりと中心温度を確認しましょう。
電子レンジを使った調理法
ヒロポン'sレシピのレンジで作る簡単ローストビーフ作ってみたら…レンジ500wの時間で加熱したため火が通り過ぎて中の温度が高くてしっかりウェルダンになってしまった😩
— 浅井愛莉 (@airin1464) May 6, 2020
でも味は美味しい…🙌 pic.twitter.com/aYxw2s3sdL
電子レンジでも、ローストビーフを作ることができます。
しかし、温度管理が難しく「ロゼ」にならない方が続出です。
細かく、中心温度を見ながら、挑戦してみて下さい。
- 材料(2~3人分)
-
牛ももブロック肉・・・400g
塩・・・大さじ1/2
黒胡椒・・・大さじ1/2
オリーブオイル・・・適量
ニンニク・・・適量 - 手順
-
1. ブロック肉を冷蔵庫から出し、2~3時間放置
2. ブロック肉をビニール袋に入れて、レンジの解凍モードで15~30秒加熱し、5~10分程度冷ます
3. 2を繰り返し、肉の先端部分が温かくなったら、ブロック肉の中心部を温度計で計る
4. 中心部が45℃前後で、電子レンジから取り出し、1~2時間冷ます
5. レンジの解凍モードで30秒温め、中心温度が54~59℃になるまで、加熱→冷ますを繰り返す
6. ブロック肉、塩、水50㏄をビニールに入れて、1時間放置する
7. 黒胡椒をブロック肉全体にまぶす
8. フライパンにオリーブオイル、ニンニクを入れ、加熱し、ブロック肉を全面強火で焼く
9. 粗熱を取れば完成
おすすめのローストビーフ温度計
タニタ温度計 ブラウン TT-583 BR
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ローストビーフの生焼けで食あたりしないために
菌を繁殖させない
購入したばかりの生肉や、物が詰まった冷蔵庫に入れた生肉などは特に、菌が繁殖する可能性があり非常に危険です。
以下の保存条件をしっかり守りましょう。
芯まで加熱する
表面ではなく、あくまで中心温度です。
ロゼの状態の判断は難しいかと思いますが、食中毒にならないよう、しっかり加熱しましょう。
中心温度を確認する
先ほどご紹介した通り、中心温度を確認する方法はいくつかあります。
温度計を使うデジタルな方法をはじめ、竹串や自身の肌を使い確認することもできます。
しっかりと中心温度を確認して、食中毒のリスクを減らしていきましょう。
ローストビーフを温めなおす場合
調理している最中に、「切ってみたらやはり生だった!」なんてこともあるかと思います。
そんな時に、ぜひ実践していただきたい温めなおし方をご紹介します。
湯銭を使った温めなおし
- 肉をラップで二重に包み、ビニール袋に入れた上から、ジップロック等の密封袋に入れてしっかりと口を閉じる
- 鍋で湯を沸かし、1を入れて蓋をする
- 状態に合わせて、5~20分湯銭する
- 蓋を開けて5分放置し、鍋から取り出して冷めるまで放置する
オーブンを使った温めなおし
- オーブンを70℃で予熱しておく
- 肉をアルミで包み、オーブンで加熱
- 加熱が終わったら、冷めるまで放置する
炊飯器を使った温めなおし
- 肉をラップで包み、保存袋で密封する
- 炊飯器に約70℃のお湯を入れる
- 1を炊飯器に入れ、40分保温する
- 加熱が終わったら、外に出して冷ます
電子レンジを使った温めなおし
- 肉をラップで包んでレンジへ入れる
- 200Wで2分加熱する
- 切り口を見て、生だった場合は30秒程度加えながら再加熱していく
- 加熱が終わったら、冷ます
フライパンを使った温めなおし
- 弱火でフライパンを熱し、肉を入れて表面に焼き色を付ける
- 蓋をして、蒸し焼きにする
- 焼き色が付いたら、火を止め、冷ます
※焼き色がついている場合、湯銭かオーブンを使用するのをおすすめします。
ローストビーフの食中毒まとめ
今回は、ローストビーフと食中毒の関係を掘り下げていきました。
時間をかければかけるほど、料理は楽しく、おいしく感じられると思います。
クリスマスやお正月など、家族が集まるイベントになると、やはり、華やかな料理は、その風景を彩っていくものですね。
そんな一役を買ってくれる「ローストビーフ」です。
中心温度を確認するひと手間を加えれば、ローストビーフ作りも、心配なくできることでしょう。
食べ物の危険を感じず、美味しいと食べれる料理を時間をかけて作ってください。
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