紅茶、ミルクティーを始めとする温かい飲み物にビスケットやクッキーを浸して食べることを「ダンキング」といいます。紅茶の本場イギリスではビスケットの食べ方の定番です。イギリスだけでなく、広く世界中で楽しまれるダンキングとはどんなものなのでしょう。手順やおいしさ、楽しみ方をご紹介します。
ダンキングとは?
ダンキング(Dunking)とは、英語のdunk(浸す)からついた名前で、あたたかい紅茶にビスケットなどを浸して食べることをいいます。英語での「ビスケット(biscuit)」は「手でつまんで食べる形状のもの」を広く指し、ダンキングに使われるビスケットには、クッキー、ショートブレッド、スコーン、ドーナツ、マドレーヌなども含まれます。
ダンキングの歴史
ミルナーとロボがダンキングする(紅茶に浸して食べる)のに最適なビスケットを選ぶビデオ🐐
— Yumiko Tamaru (@yumikotamaru) August 3, 2019
私は爆笑したけど、これを見て面白いと思った海外のファンはどれぐらいいるんだろう?😅
そもそもイギリスにはビスケットを紅茶に浸して食べる文化があるということを知ってる人はどれぐらいいるんだろう? https://t.co/BKsh1DL8s0
歴史をさかのぼると、古代ローマの時代、固いワッフルをワインにつけてやわらかくして食べていたことがわかっています。「ビスケット」の語源となったラテン語の「bis coctum」は「二度焼きの」という意味ですが、水分少なめの固い焼き菓子を飲み物に浸して食べるのには長い歴史があります。
現代のダンキングのルーツは、16世紀のイギリス海軍にさかのぼることができます。長い船旅での生活には、小麦粉、水、塩でできた「ハードタック」と呼ばれる日持ちのする無発酵のパンが好まれました。この日持ちのする固いパンを食べるのに海軍の兵士たちはビールに浸して食べていました。
その後19世紀になってイギリスでアフタヌーンティー(昼下がりに紅茶を飲む習慣)の文化が広まると、現在のようにビスケットを紅茶に浸して食べる習慣が一般的になり、イギリスから世界へと伝わっていきました。
世界中で見られるダンキングの習慣
【紅茶トリビア】
— 🇬🇧UK in Japan🇯🇵 (@UKinJapan) November 1, 2016
お茶請けのビスケットを紅茶に浸して食べる「ダンキング」は英国で一般的な食べ方の一つ。日本ではお茶に煎餅を浸しません、よね? @WiredUK は、どのビスケットがダンキングに適しているか実験しました⇒https://t.co/HVx6IkwzYq #紅茶の日 pic.twitter.com/r1c3hEBpL1
ダンキングの習慣はヨーロッパ、アメリカ、インド、アフリカなど世界中で見られます。イギリスのマクビティー、アメリカのオレオ、オランダのストロープワッフル、ベルギーのLotus、オーストラリアのティムタムなどは日本でも人気で、店頭でもよく見かけますが、じつは各国でダンキングの定番となるビスケットなのです。
ダンキングのビスケットは固い焼き菓子だけに限りません。おなじみ「ダンキンドーナツ(Dunkin’ Donuts)」というアメリカのドーナツ店の名前も、ドーナツを温かい飲み物に浸すところからつけられました。インドやアフリカでは移動中の食事や長期保存のための固いラスクをダンキングする習慣も一般的です。
フランスではクロワッサンなどのやわらかいパンををカフェオレにダンキングすることも。20世紀ヨーロッパ文学を代表するフランス人作家マルセル・プルースト。彼の代表作『失われた時を求めて』では、紅茶にマドレーヌをダンキングしたときの香りでふと幼少期を思い出す、という印象的なシーンから物語が始まります。
世界のさまざまな国で、ダンキングは生活や文化に根付き、愛される、おいしいビスケットの味わい方なのです。
イギリス人のダンキングへのこだわり
ダンキング発祥の地ともいうべきイギリスでは日常的に紅茶、とりわけミルクティーがよく飲まれます。ティータイムのお供にはもちろんビスケット。
イギリスの生活でダンキングは家や友達との空間でリラックスしたカジュアルな食べ方です。それだけに、どういうダンキングがいちばんおいしいのか、どのビスケットがダンキングに最適なのか、イギリスではさまざまなメディアで語られ、科学的に検証されたり、自分のこだわりを紹介する場面がしばしば見られます。
ただのおやつではない、ダンキングの味わいをあなたも体験してみませんか。
ダンキングの手順
日本にいても気軽に楽しめるダンキング。温かい飲み物とビスケットがあればできるうえ、手順はとっても簡単です。
- 固めのビスケットと温かいミルクティー(お好みでコーヒー、ミルクでもよい)を用意する
- ミルクティーにビスケットを半分ほど浸し、浸した部分を食べる
ダンキングの手順はたったこれだけです。
どんな紅茶にどんなビスケットを組み合わせるか、どれくらいビスケットを浸すかはまったくの自由です。どれがいちばんおいしい食べ方か、自分好みのおいしい食べ方を見つけましょう。
ダンキングをするとどれくらいおいしくなるのか?
ビスケットを紅茶に浸けるだけのダンキングですが、イギリス人のこだわりを見るととてもハマるもののようで、さぞかしおいしいものに見えです。
ビスケットをお茶うけとしてそのまま食べてももちろんおいしいのですが、紅茶にビスケットを浸すと、ビスケットの風味が増して温かくふんわりやわらかい食感になります。ビスケットの糖分や表面にコーティングされたチョコレートが飲み物に溶けるのがおいしいという声も。ジンジャークッキー、スパイスクッキーを使えば、紅茶の風味がまるでチャイのようにスパイシーになります。
ミルクティーもビスケットの甘みがプラスされ、コクのあるしっかりとした口当たりとなります。実際に、ダンキングした方の感想をツイートから見てみましょう。
ダンキングは衝撃的なおいしさ
紅茶にビスケットやクッキーを浸すことをダンキングというらしいのですが、さっきやってみたら衝撃の美味さだった。あかん、これはあかんやつや
— 浮島ギョーザ (@rankeibou) July 3, 2020
想像するだけでもおいしそうなダンキングですが、やはりその味は間違いなかったようです。
まさに衝撃的な美味さという一言で十分。
病みつきに
\これぞ英国文化の王道🇬🇧紅茶×ビスケット/
— トワイニング (@TWININGS_jp) May 14, 2019
イギリス人にとって“紅茶にビスケットを浸す”食べ方はもはや日常☕️
沢山あるビスケットの中でも特に人気なのはマクビティのダイジェスティブなんだそう🍪
一度試したら病みつきになる英国式王道スタイルで、より豊かな味わいを💓#Twinings#紅茶 pic.twitter.com/V3i4Iuzoj2
病みつきになるおやつは色々ありますが、ダンキングもまさにその病みつきになるおやつの一つです。
日本ではなじみのないダンキング。その味わったことのない味わいは一口目から病みつきになること間違いなし。
とろける食感で最高の休息を
イギリスでの愛用品:マクビティのミルクチョコビスケット。熱い紅茶にサッと浸すと、口に入る頃にちょうどとろけるような食感になっているのです。課題に行き詰まったらまずはカフェイン&糖分を。このビスケットは日本でも買えるはず。 pic.twitter.com/FbOZrgaQbo
— わたぽん (@wataponf1_uk) October 30, 2018
普段のビスケットを紅茶に浸すだけで、最高の食感と味に大変身。
なんて事のない休息が、ダンキングによって最高のものになります。
それに加えて糖分補給もできて言うことなし!
ダンキングは可家具的に証明されたおいしさ
紅茶にクッキー突っ込むことをダンクというのですが、別々に食べてもおいしいやん?という疑問。
— のくたぬー (@Nock_tan) May 27, 2020
紅茶に浸すと小麦の香気成分2-メチルブタノールが強く感じられるようになり、クッキーが香ばしくおいしく感じるそうでっせ。
科学的に証明されたので遠慮なく浸そう。
確かに別々に食べても美味しいという疑問や、マナーが悪いかも…と感じている人もいるでしょう。
しかし、そんな細かい問題は置いておいてダンキングは一度試すべき。
こちらのツイートによると、なんとダンキングはおいしく感じるようになることが科学的に証明されているとのこと。
ダンキングでふやけたビスケットは賛否両論
マクビティと言えばダンキング!とミルクティーに浸けて食べてみたけど、わたしは好きじゃない。サクサクがいい…
— tomoe (@ringosan) July 23, 2020
バニラアイスを挟んで食べるとおいしいので、たまにおやつにそうやって食べてる。サクサク感のあるクッキーサンド。
紅茶+ビスケットの組み合わせは想像するだけでも、おいしそうな味が口に伝わってきますが、やはりあまりダンキングは好きではないと感じる人もいるようです。
食感という点では好みが分かれるようです。
たしかに、どのくらいの長さでダンキングしたらよいか、どのビスケットがダンキングに向いているのか追求したくなるのもわかります。
では具体的にダンキングし使用する紅茶やクッキーは、どんなものを使うとおいしいのか?
以下でご紹介していきましょう。
ダンキングに合う紅茶
ダンキングはあたたかい飲み物を使います。紅茶、コーヒー、ミルクなどが向いていますが、ぜひミルクティーで試してみると本場イギリスの味に近いダンキングができるはず。ダンキングに合う紅茶をいくつかご紹介します。
リプトン アッサム
リプトンのアッサムは、マイルドで甘みのある香りと濃厚でしっかりとした味の紅茶です。しっかりした味わいはミルクたっぷりのロイヤルミルクティーやチャイなどにもぴったり。ビスケットを浸しても紅茶そのものをしっかり味わうことができ、ビスケットの風味とも調和するのがおすすめです。
トワイニング レディグレイ
イギリスの紅茶文化を根付かせたのがトーマス・トワイニング。彼の名前を冠したお店はロンドンで現在も営業中で、日本にいても茶葉を購入して味わうことができます。
レディグレイはアールグレイにオレンジピール、そしてレモンピールを加えることで、さわやかでフルーティーな香りが特徴。クッキー生地にそのまま練り込んでもとても合います。ミルクティーよりストレートがお好みの方は、クッキーとの相性抜群のレディグレイがおすすめです。
カレルチャペック アールグレイ
かわいいパッケージが印象的な東京・吉祥寺のカレルチャペック紅茶店。ベルガモットの香りがしっかり味わえるアールグレイはどんな飲み方でもおいしくいただけますが、ダンキングにはぜひ温かいミルクティーで。さわやかさのある渋みとアールグレイ独特の香りで、ビスケットをさっぱりいただけます。
ダンキングに合うビスケット
ダンキングのおいしさは、あたたかい紅茶に浸したときにビスケットが崩れすぎないこと、ビスケットがミルクティーをどれくらい吸い込むかがポイントです。日本のビスケットでは崩れてしまってうまくできないことも。どんなビスケットが向いているのでしょうか。
イギリスでもっとも古いタブロイド紙Daily Mailは、2016年にダンキングにぴったりのビスケットについての記事を発表しました。10種類のビスケットについて、ロボットアームを使って15秒のダンキングを行い、崩れるまでの時間やどれくらい紅茶が染み込むかを検証し、価格や味わいとともにポイント化し、順位付けしたものです。その結果から、ダンキング向けビスケットとその特徴をご紹介します。
マクビティ リッチティー
10種類のビスケットのうち、マクビティのリッチティーがダンキングにぴったりのクッキーとしてもっとも多くのポイントを得て、1位に輝きました。10分にわたるダンキングでも崩れることなく、吸収した紅茶はなんと14グラム。まさに「リッチティー」の名の通りです。日本のマリービスケットと似た、シンプルでプレーンな固めのビスケットです。王道のダンキングのおいしさを味わうならこのビスケットに決まりです。
マクビティ ダイジェスティブ
マクビティのダイジェスティブは4分間のダンキングにも耐え、12グラムの紅茶を吸収しました。ビスケット1枚が14.8グラムなので、ダンキングすることによってなんと2倍近くの重さに。全粒粉のつぶつぶした食感と甘さ控えめな味もミルクティーと好相性です。丸い形をしているビスケットの直径が大きめで、エレガントなカップよりも大きめマグカップでのダンキング向きです。
マクビティ ミルクチョコレートダイジェスティブ
同じマクビティダイジェスティブの片面にチョココーティングがされているミルクチョコレートダイジェスティブは4位に入りました。ビスケット自体は3分以上のダンキングでも形が崩れることはありませんでしたが、コーティングされているチョコレートはダンキングであっさり飲み物に溶けてしまい、紅茶に甘みを加える結果に。溶けたチョコ、ビスケット、ミルクティーがカオスな状態になってしまうのは好みが分かれるところ。
フォクシーズ パーティーリングス
パーティーリングスはピンクやイエローなどカラフルに色付けされたリング型クッキーです。表面がカラフルなアイシングでコーティングされているため、15秒のダンキングで紅茶は1gしか染み込みませんが、10分ダンキングしても形が崩れることはありません。ダンキングしても固くて歯ごたえが残りますが、紅茶を吸わないことでダンキングの醍醐味が薄れてしまうのは少し残念かもしれません。
オレオ
日本でもおなじみ、黒いクッキーに白いクリームがサンドしてあるオレオは10件中8位でした。1分16秒のダンキングが可能で、吸収した紅茶は6グラムでした。サンドしてあるクリームによってクッキーを支えられているため、ダンキングしても崩れにくくなっていますが、アメリカ人以外には甘すぎるという評価も。
ダンキングをしてみよう
ダンキングなら、自宅にいながらにしてイギリスのリラックスした紅茶の楽しみ方を味わえます。ミルクティーとビスケットという、なんの変哲もない組み合わせから、無限のおいしさを追求できてしまうことも。いつものティータイムをダンキングを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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