例えば子供にザリガニとエビの絵を描かせた場合や、大人に簡単なイラストを頼んだ場合、多くは赤い体にハサミがあるか無いかの違い程度の表現で、なんとなくこれはザリガニ、これはエビと認識出来てしまう事があると思います。
あくまで一般論になってしまうかもしれませんが、それほどイメージとしてザリガニとエビというのはよく似た部分が多いという事でしょう。
ざっくりと!!
- ザリガニは淡水に住んでいる、臭みがある
- エビは海水に住んでいて美味しい
と、大まかなイメージを持っていただくと分かりやすく、なんとなく違いも見えてきます。
ぱっと見が似ていて、ぱっと見の違いも、なんとなくイメージできるザリガニとエビは、どんな関係性があるのでしょうか。
ちょっと掘り下げてみてみることにしましょう。
ザリガニとエビの違い
ザリガニとエビの生物学的見解による違い
まず、ザリガニを生物学的に見てみると、【節足動物門・甲殻亜門・軟甲綱・ザリガニ下目(甲殻類・十脚目)】
ザリガニ上科とミナミザリガニ上科の総称でザリガニ類とも呼ばれます。
一方、エビを同じく生物学的にみてみると、節足動物門・甲殻亜門・軟甲綱・十脚目(エビ目)のうち、カニ下目、ヤドカリ下目以外、全ての種の総称と、あります。
中々難しい言葉が並びましたが、
ちなみに日本固有種のニホンザリガニは、十脚目、アメリカザリガニ科・アジアザリガニ属に属していて、これを単にザリガニと呼ぶこともあるそうです。
ザリガニとエビの体の違い
ごく一般的な見分け方であれば、ハサミの有無が端的に発見しやすく、その違いではないでしょうか。
ただしこれはあくまで、一般的なイメージとしてのお話しで、エビにも分類によってはハサミが存在します。
例えば、見た目でわかるハサミを持ったエビ、それがテナガエビです。
とはいえ、先の項目でお話ししましたが、ザリガニもエビの仲間なので、見分け方としては、大きく発達したハサミを持つのがザリガニ、ということになりますね。
ザリガニとエビが住んでいる場所の違い
ザリガニは池や用水路、または流れの緩く浅い泥底のある小川のような、いわゆる淡水域に生息しています。
立派な竿がなくても、その辺にある棒切れに凧糸などを巻いて、スルメやパンくずなどを餌にしてザリガニ釣りをした記憶が筆者にはあります。
一方、エビはというと、淡水域から海水域まで様々な種類が存在します。
テナガエビは淡水域に生息しており、他にもスジエビやヌマエビなども同じく淡水域に生息します。
海水域に生息するエビには、群れで遊泳しているサクラエビ、昼間は砂泥の中にいて、夜になると海底で活動するクルマエビ、または比較的海底の浅い場所に生息する伊勢海老、深海に生息するシラエビ、アカエビなど、海域でも種類によって生息地は様々です。
ザリガニは臭い?
ザリガニはエビなどと違って、子供でも釣る事が出来て、気軽に飼育できますが、その飼育方法を間違えて、ザリガニに臭いイメージを持った人もいるのでは無いでしょうか。
これはザリガニが臭いのではなく、飼育している時の水にザリガニの排泄物や餌の食べ残しが溶けて腐った匂いです。
飼育時の水の管理が大切だということになりますね。
ザリガニはカニ?
ザリガニはエビの仲間というのはわかりましたが、なぜ「カニ」がつくのでしょうか。
ザリガニという名は、元々はニホンザリガニの事を指したのですが、昭和期以降に食用目的として持ち運ばれたアメリカザリガニが繁殖して定着してしまった事で、今ではザリガニといえばアメリカザリガニを指す事が一般的になってしまいました。
江戸期にはニホンザリガニを別称として「フクガニ」、「イサリガニ」などと呼ばれていたそうです。
また、地方によっては、エビのような身体つきにカニのような大きなハサミを持つとして「エビガニ」と呼ぶこともあるそうです。
ちなみにザリガニは英語名では「クレイフィッシュ」となるのですが、カニの語源が由来しているそうです。
カニとザリガニの違いは?
ザリガニは生物学でいうとエビの仲間に分類されるのですが、エビとは、カニ下目、ヤドカリ下目以外、全ての種の総称となっています。
すなわちエビにカニ下目が含まれていないため、ザリガニとカニは仲間では無い、ということになります。
名前には「カニ」が付くのに、生物学の中では仲間とは言えないんですね。
ちなみにカニは十脚目短尾下目(カニ下目)に属する甲殻類のことを指します。
タラバガニや、ヤシガニは十脚目異尾下目(ヤドカリ下目)になって、カニ下目ではありません。
つまり、タラバガニやヤシガニは、名前にカニとあっても厳密にはカニではない、という事ですね。
ロブスターとザリガニの違いは?
ロブスターとは
ロブスターは十脚目(エビ目)、ザリガニ下目、アカザエビ科、ロブスター属に分類される甲殻類2種。
2種とはヨーロピアン・ロブスターとアメリカン・ロブスターを指すのですが、広い捉え方では、伊勢海老や淡水に生息するマロンなどもロブスターと呼ばれます。
つまりはロブスターもザリガニの仲間ということです。
簡単な認識としてはザリガニは淡水、ロブスターは海水、と言って間違いではありませんが、厳密にはどちらも海水域に生息する種も、淡水域に生息する種もいるということになります。
食用としての需要
世間的な認知度を考えてもザリガニよりもロブスターの方が食用としてのイメージが強いですね。
ザリガニも食用として扱われたりもしますが、ロブスターはシーフードチェーンレストランの名前になっているくらいですし、食材としても西洋料理では高級な部類になりますよね。
ちなみに、売られているロブスターをみると、大きなハサミの部分に白いテープやゴムバンドのようなものが巻かれています。
これは、ロブスターの性格が獰猛で、仲間同士で傷つけ合うことがあるので、それを避けるために水揚げされるとすぐにそのハサミを固定されるのです。
圧倒的な寿命の差
ザリガニは平均寿命が6、7年なのに対して、ロブスターは推定年齢が100歳程のものが発見されるそうです。
ロブスターは他の甲殻類同様、脱皮を何回もして大きくなっていきますが、その際に、他の甲殻類と違うのは、殻だけでなく、内臓も新しく入れ替わります。
数年前にはアメリカのシーフードレストランで推定年齢が140歳になる巨大なロブスターが発見されたそうで、そのロブスターは動物愛護団体によって、調理はされず、海に返されたそうです。
獰猛な生物ってどことなく寿命が短いイメージでしたが、ロブスターの生命力はすごいですね。
オマール海老とロブスター違い
オマール海老とは
オマール海老とは英語名のロブスターに対してのフランス語名になります。
つまり、オマール海老もロブスターもフランス語名か英語名かの違いだけ。
「オマール」とは、フランス語でハンマーを意味して、大きなハサミがそれに見える事が由来しているそうです。
種類として
- 大西洋のノルウェー辺りから地中海付近のものをヨーロピアン・ロブスター
- カナダからカリブ海に至る大西洋西岸辺りまでのものをアメリカン・ロブスターとしています。
同じ仲間で、産地が違うという事ですね。
ヨーロピアン・ロブスターが体長が50cmほどに対して、アメリカン・ロブスターは120cmほどになる個体も捕獲されているそうです。
食材として
どちらも西洋料理で扱われますが、食材としても味としてもヨーロピアン・ロブスター、つまりはオマール海老の方が上、とされています。
捕獲量もアメリカン・ロブスターの10分の1ほどらしく、値段はアメリカン・ロブスターの2倍以上になることもあるそうです。
それぞれの味の違い
種類や、調理法、食文化の違い等などで、感じる味、実際の味、イメージする味などが、あるかと思います。
科学的根拠があったとしても、人が感じる味覚の違いもそれぞれあると思うので、この項目に正解を見出すのは難しいかもしれません。
ザリガニ
日本国内でザリガニは食材としての人気はそれほど高くは無いと思いますが、海外ではザリガニ料理は人気があるそうです。
調理前にはしっかりと泥抜きをして、一定期間浄水して臭みを無くします。
味は淡白で、食感はシャコやカニに似ているとも。
アメリカでは、ケイジャン料理のジャンバラヤなどに頻繁に使用されたり、脱皮直後のアメリカザリガニを食用油で揚げると、殻ごと食べられて美味しいとの事です。
カニ
おそらく、日本では甲殻類の料理としては、かなり幅広く、かつ高級食材としても、とてもメジャーではないでしょうか。
それも、淡水に生息するカニよりも圧倒的に海水に生息するカニが好まれているように思います。
独特な甘味や旨味を持っていますが、産地によって、その味は微妙に変化があると思いますし、種類によっても、身の詰まり具合などでも、当然変化しますね。
ワタリガニやズワイガニなどを使ったカニ汁など、出しの味を楽しむ事も出来ますね。
エビ
エビにもいろいろな調理法があって、和食でも洋食でも、様々な種類のエビを食する事が出来ますが、刺身なら甘エビやボタンエビ、天ぷらなどに使われるウシエビ(ブラックタイガー)、または縁起物の象徴である伊勢海老などは刺身、フライ、鍋など様々な調理法で食すことのできる、高級食材の代表格と言えるでしょう。
洋食では、クルマエビやウシエビ(ブラックタイガー)などはグラタン、パスタ、またはフライにと、家庭料理としても馴染みがあると思います。
ロブスター
アメリカン・ロブスターも食材としては、フランス料理でオマールと呼ばれています。
オマール海老
先でもお話ししたように、オマール海老とはロブスターのフランス名であって、ロブスターですが、
アメリカン・ロブスターよりも小ぶりで、身が詰まっていて、味も濃厚ということです。
値段もアメリカン・ロブスターより高いそうです。
伊勢海老はどれに近い?
伊勢海老は分類上、十脚目、イセエビ科、イセエビ属、となります。
西洋では大型の食用エビはロブスターの名前が付き、伊勢海老は(スパイニー・ロブスター/棘のあるロブスター)と呼ばれています。
しかし、ロブスターはアカザエビ科、ロブスター属に分類されるため、厳密には伊勢海老とロブスターは仲間では無いのですが、日本国内では、大きなハサミを持ったザリガニの仲間である食用ロブスターを「オマール海老」と呼んだりするのです。
広義でのロブスターとは、大型の歩行エビ全般を指す総称で、アカザエビや、伊勢海老も含まれます。
伊勢海老とロブスターは、見分け方として、ハサミの有無で確認出来ますが、食材前提になると仲間になってしまうという事ですね。
ロブスター、ザリガニとカニ、エビの違いまとめ
それぞれの違いについて、一般的な認識というもがあるかと思いますが、ちょっと掘り下げてみると、不思議な関係性がありました。
- ザリガニは「カニ」が付くが、カニの仲間ではない。
- ザリガニは分類上はエビの仲間。
- テナガエビのように大きなハサミのあるエビも存在する。
- ロブスターはザリガニの仲間。
- ロブスターは長寿命。
- オマール海老はロブスターのフランス語名。
- 伊勢海老は西洋の食材名はロブスター(スパイニー・ロブスター)。
伊勢海老とオマール海老の食べ比べなんていうのが出来たらやってみたいと思いました。
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