DTL.asイベントレポート nucode(中井ナオト)さん編
DeskTopLive.asイベントレポート、4回目はnucode(中井ナオト)さんです。
当日はレーザーポインターを使った入力システムで自作の「未来楽器」を演奏されたほか、実演はされなかったものの、自作のタッチディスプレイも用意されていました。
今回はそのハード・ソフト両方についてお話を伺ってきました。
●現場の環境に苦戦
–まず、当日の感想から聞かせてください。大分早い時間からリハーサルしていただきましたが、どうでしたか?
nucodeさん(以下 nと略します):当日の感想は、”トラブル続き”ですね…。リハーサルの時に動かなかったので、もうダメだと。どこに赤外線があるのか分からないんですけど。
–そのあたりの仕組みをおさらいさせてください。
これはカメラで捕らえた赤外線を認識してるわけですよね。カメラは普通のWebカメラですか?
n:Webカメラの赤外線フィルター部分をポコって外しちゃってますね。その後、赤外線透過フィルターを貼ってます。
カメラは5つ以上買って、全部ばらしてます。ばらしやすいやつがこの2つですね。
–僕もたまにWebカメラを色々買って「これがいい!」とかやってるんですけど、そのカメラ初めてみました。
n:結構、みんなこのWebカメラ使ってますね。タッチパネルやってる人は結局これに行き着くのかもしれません。プリンストンテクノロジーのやつですね。
日本では他にも早いうちからタッチパネルされてる recotanaさんという方もこのwebカメラでしたね。あと徳井さんっていうメディアアートされてる方もこれのばらし方を自分のサイトに書かれてました。
–しまった、まだ僕そこへ行き着いてないです(笑)それを使っている理由は、写りの良さとかですか?
n:赤外線カットフィルターの外しやすさですかね。
–Webカメラって、カタログスペックだけでは読み取れないものがいっぱいありますよね。光が足りないときの特性とか。
n:暗くなるとフレームレート勝手に落として、あまりにも暗くなると信号を送らないっていうWebカメラが結構あるんですよ。そうすると、こういうタッチパネルで部屋を真っ暗にするものは、部屋が暗くなると急にオフになってタッチした瞬間にまたオンになったりするんです。だいたいのWebカメラだと、挙動が怪しくて反応が悪くてダメでしたね。
–フレームレートも面倒な問題ですよね。
n:当日、フレームレートも低いままで会場入りしたのでダメでしたね。
本当はPCだと固定でできるんですけど、当日はMacを持って行ったので、レート固定にする方法がなくて「どうしようかな」と思いながらフレームレート低いままやったりとか。
外でやるの初めてだったので、準備が大変ですね。
–なるほど。試行錯誤されてましたね。
n:そうですね。結構、白熱球に弱いんですよ。入口のドアが開くたびに光が入ってダメになる。
一応、”背景除去”という機能をつけてるので、ずっと光ってる電灯だったら差分を取って消せるんですけど、突然ついた光には弱いんです。
あとは、キラキラするのに弱い。金属質なものに弱くて。
カヤックさんのドラムキットがピカピカするのに反応してて「あぁ、どうしよう」って思いながら、カメラの方向を変えたりとか(笑)
–現場ならではの悩みがあったわけですね。
●未来楽器プロジェクトとは
–タッチパネル、すごいですね。
n:そうそう。みなさんタッチパネルに興味がありますね。実は、タッチパネルは全然メインじゃないんです。
アプリケーション自体がメインで、タッチパネルは何でも良かったりするんです。だけど、やっぱりタッチパネルは珍しいから。
–なるほど、なるほど。
あのアプリを触るためにインターフェースにもこだわって、ハードも作ったということですね。
n:そうなんですよ。「未来楽器プロジェクト」って自分で名前をつけてるんですけど。
今、ブログにコンセプトを書いてるんですよ。「未来楽器とは何?」という。将来的には、ネットに落ちてる動画とか音声とかテキストを自由に組み合わせて、ユーザーさんが好きなように編集して、またアップできるようなツールを作りたいっていうのがあるんです。
普通はシンセとか買わなくちゃダメなのを、例えば、「そのSNSの会員になって自分のキーボードとかを差してアクセスすると、それだけで完結して曲が作れて映像が編集できて」というシステムがあると楽しいなっていうところを目指して作ってますね。
–なるほど。
n:それの一環で、タッチパネル認識の部分はFlashで動いてるので、図面通りにタッチパネルを自作した人が、サイトへアクセスしてWebカメラで撮ると家でも同じようにタッチで操作する楽器が体験できるよ、みたいなことがやりたいなっていう感じなんですよ。
●タッチパネルの構造
–このタッチパネル、制作にどれくらいの期間かかりましたか?
n:制作の歴史は結構長くてですね。僕が前の会社を辞める前に……
Jeff Hanっていう人のタッチパネルのビデオって見た事あります?この人がFTIRという、いわゆる最近みなさんが作ってるタッチパネルの元祖の人なんですよ。
–あ、これ見た事あります。
マルチタッチで拡大縮小とかの走りですよ。これを前の会社の在籍中に見て、「俺も作りたい!」と。会社辞めたのが2007年9月くらいだったと思うんで、それくらいの時にタッチパネル作ろうかなと思って作り始めてましたね。
このFTIRは作るの結構大変で、LEDを100個とか200個とかウワーってこのふちに付けなくちゃだめなんですよ。フレームをがっしり作って穴を200個つけて、その間にLEDを入れるって言う。最近は基盤みたいなのが売ってるんですけど、当時なかったんでガーッとやってて、これはちょっと面倒くさくてようやらんなと思って途中挫折して、さぼる方法を考えたのがレーザーだったんですよ。
–相当スマートになりましたね。
そう!
LEDが面倒くさくてどうしようかなと思ってた時に、ラインのレーザーというかケガキみたいなのあるじゃないですか。電子ケガキみたいなのが。知りません?工事現場で水平とか取る時に…
–墨壷のレーザー版みたいな?
そうそう。墨壷のレーザー版があって、それを見た時に「お!コレ使えるぜ!」と思って、日本じゃ売ってないんで海外のサイトで取り寄せて、ここにくっつけるって言う工夫を。
–墨壷のレーザーって細い線が出るものじゃないんですか?必要なのは、扇形のレーザーなのでは。
墨壷のレーザー……あ!じゃあ見ます!?これ知らないんだ!?(と、取りに行く)
墨壷ってこういう仕組みになってるんですよ。そうか知らないんだこれ。これから説明しないとダメということですね。プレゼンテーションは(笑)
–なるほどー!お恥ずかしい。僕も初めて見ました。
これはね、ここ(タッチパネルの右下の角)に付いてるんですよ。だから、指を当てると指の腹が光って、っていう感じになるんです。
–そのレーザー1個がLED100個の役割を果たしてるんですね。都合の良いというか、丁度良いものがあるわけですね。
そう。これを使うっていうのが「大発明だ!」と思ったんですよ(笑)
で、それがね、2007年の10月くらいに作ってて…
–出ましたね!この話。
そうそう。マイクロソフトに越された話です(笑)
●タッチパネル制作物語
これは特許を取らなきゃと思って2008年の2月に弁理士さんのところに行ったんですよ。
今までのタッチパネルって言うのは、遮るか、カメラ2つ付けて三角測量でっていうのかしかなかったのが、さっきのJeff HanさんがFTIRで指の先の光を取るっていうのを考えたんですよね。
FTIRは課題があって、画面に強く触らないと光らないんですよね。指の先が。だから、操作がめんどくさいっていうのと、あと箱が必要。パーツが多いから製造コストが増える。可搬性も問題だ。それに天板の素材も透明じゃないとダメじゃないですか。
これらの課題を解決するのがレーザー式の提案ですよと。
レーザーの良いところって言うのは、軽いタッチで、っていうかほとんど触らなくても指が光に当たるだけでも認識するんで。あとフレーム不要。箱もいらない。パーツも少ない。可搬性も良い。既存商品にタッチパネル機能追加が楽。
で、FTIRとの違いはここ(光源)だけだけど、「これって特許になるの?」っていうのを弁理士さんに聞きに行ったのが2008年の2月で、その時に何か証拠を残しておかなくちゃっていうので、YouTubeに最初のテストをアップしてるんですよ。
–わりと最近の話ですね。
ちょうど1年前ですね。2008年の2月27日にマルチタッチの新しいコンセプトですよって出してるんですよね。
でもその後MicrosoftのTouch Wallが出て(笑)本当にね。ここショックでね。この後、寝込んだんですよ(笑)
Touch Wallの最初の発表は、米国時間5月14日なんですよ。
–遅いですねー。
僕、3ヶ月前で。おまけにビルゲイツがプレゼンした時に動かなかったんですよ。当日。おまけにバラックじゃんって思ったんですよ。何てイモ臭い!美しさが無いわ!(笑)
–(笑)フレームもあるし。
で、勝ったと思ったんだけど、結構厳しかったんで…
特許は、1日400件くらいデータベースで毎日調べてたんですよ。1年間。
Google Patent Searchっていう便利なのがあって、毎日検索しては、タッチパネルの特許は見まくりましたよ。日本のタッチパネルの特許は全部見て「よし!無い」みたいな(笑)
ちょっと後悔したのが、欲に走ったのが良くなかったのが良くなかったなと。シャレじゃないですよ(笑)
多分、当時、「オレこんなん作ったんだぜ!」って言って公開もできるわけじゃないですか。仕組み含めて。一時はマイクロソフトに勝った男として、ネットでは後世に名が残ってたはずなのが、「あ、これで一儲け!」と思って弁理士さんのところへ行ったが為に出遅れちゃったんですよ。
–厳しいですねー
厳しいでしょー。
で、その後、やる気をなくして半年間ニートで。何にもしないでブラブラ。
–その後、僕(吉川)とお会いして、そこで未来楽器のFlashを見せてもらいましたね。
●昔のお仕事と未来楽器の関係
未来楽器を最初に考えたのは、PS2が出てすぐぐらいの時に、PS2でこの丸がくっつくデモ作ったんですよ。それからなんで、ものすごい時間経ってますね。
–PS2開発の言語はCですよね。(ねんのため)
Cです。元々Cで書いてたんですよ。そのために動画の再生ルーチンを作ったりとか、サウンドも1から作ったりとかで。
このサウンドのエンジンはBEAT PLANET MUSICで同じコンセプトだったんですよ。プレイステーションをシンセやサンプラーにしたいっていうマイプロジェクトでSCEに入った時からそれがやりたくて。みんな高い楽器買わなくても、プレステ買えば楽器になるじゃんみたいな。っていうマイプロジェクトだったんですよね。
で、サンプリングがやりたいがために自分でサンプリングのライブラリー作って。
–お仕事の合間に?
お仕事の合間に!(笑)
その時に作ったエフェクトルーチンとかをFlashに移植してそのまま持って来てます。だから、未来楽器はBEAT PLANET MUSICのエフェクターと同じ音するんですよ(笑)
–すごい話ですね。そのときと目標は同じわけですね。
僕、今後Webサイトを画面で見るって言うスタイル自体がなくなると思うんですよ。どんどん、デバイスがそのままネットに直結してて、そのインターフェースでコンテンツを見るって言う風になるから、コンテンツがどんどんインターフェース思考になるような、という風に今思ってて。
そうすると、単体のシンセとか作っちゃえるじゃないですか。ネットが無いと動かないんだけど、実はシンセみたいな形をしているっていうような商品をこれから作ってみたいな。いたるところに楽器があって、本体はサーバですよみたいな。
早くAS3がモバイルの中で動くようにならないかな。今はそっちにかけてるんで。
●ゲーム開発経験者が語る!ASの魅力
–やっぱりAS3なんですか?Cの経験がある分、AS3のしばりが少ないように見受けられますけど。
なんでAS3なんでしょうね(笑)
–こないだ新藤さんとも話してて、「なんで新藤さんは色んな言語を使われてるのにAS3が好きなんですか?」って聞いたら、「なんででしょうね?でも、心地いいんですよね。」って二人でそういう結論にたどり着いて(笑)
多分、思った事ができやすいんじゃないですか。AS3って低レベルから書く中でもわりと高機能な抽象化されてる部分が残ってるじゃないですか。ちょうど使いやすい。バランスがいいんですよね。
本当にやりたいことに集中できて、たまにもっと深いところに手をのばしたい時にある程度の事はできる。
画像で言えばBitmapDataもいじれるし、サウンドで言えば、最近やっとだけど波形までいじれるようになったし。
–やっぱりあの標準のライブラリーというか、オフィシャルがこれだって定義した物がある程度の使いやすさと単純さでちゃんとできてるのがいいですよね。
後は、僕はサウンドは得意なんだけど、グラフィックのほうは苦手なんでCであんまりいじりたくないから。サウンドのほうは1から書いてるけど、例えばブラーをかけたいときに、フィルタつっこんでぽこってやるだけでブラーかけれるのが魅力っていうか。
だから、僕AS3なかったらあのインターフェース作れてないんで。Cだとあそこまで凝った事作れないんですよ。
–なるほどー。面白い話ですね。
だから結構、外から来た人、ゲームのプログラマーにオススメしてるんですけどね(笑)
でもみんな「へぇースクリプトなんだぁ〜」みたいな(笑)
バカにしやがってぇ〜って思って(笑)
そこで、認識から音までAS3なんだよって書いて、わざわざニコ動とかにアップしたりとかしてます。
(笑)
————————————————-
いかがでしたでしょうか。ハードとソフト両方に熱いドラマがあり、一時間のインタビューのあいだ興奮しっぱなしでした。
当日の様子がニコニコ動画(http://www.nicovideo.jp/watch/sm6540216)にアップされているほか、ご自分でもいくつかの動画をアップされているようなので、ぜひチェックしてみてください!
次回のレポートも一週間後を予定しています。お楽しみに!
[この取材は4月6日に行われました]
タグ: DeskTopLive.as


